会長あいさつ

令和5年度栃事研運営方針

 

1 運営方針 

 

学校は、子どもたちの安全・安心な生活を守り、学びの充実を図る使命を確実に果たしていくことが求められています。しかしながら、子どもたちや、教育を取り巻く環境は不安定さを増してきています。新型コロナウィルス感染症に加え、インフルエンザや麻疹(はしか)の流行、社会経済の不安定化、高度情報化社会の到来、少子高齢化の進展など様々な要因で安定した教育環境を保つことが難しくなってきています。加えて、学校や教員の働き方改革は、働き方だけでなく学校の在り方に大きな変革をもたらすことが考えられ、ここ数年は前例のない変革の年を迎えることになると考えられます。

 このような状況にあっても、学校は、「安全安心な生活の場」「多様な学びの場」として機能し、子どもたちや保護者、地域社会の「願い」を共に実現していくという重要な役割を果たしていかなければなりません。そのために常に何ができるのか、何をしなければならないのかを見出だし、考え、実行していくことが大切です。それには学校マネジメント力の向上が必要であり、教職員のみならず地域や保護者を含めた「組織的取組」が不可欠になります。その中で、事務をつかさどる職となった私たち事務職員の「役割」はとても重要であり、「仕事」として教育活動の円滑な実施に尽力していかなければなりません。 

 中教審答申「令和の日本型学校教育の構築を目指して~すべての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」では、多様な人材が指導に携わることのできる学校の実現や教師同士の役割の適切な分担とともに、事務職員については、「事務職員の校務運営への参画機会の拡大」を図ることが明示されています。また、令和5年4月の「次期教育振興基本計画について(答申)」の中で、安全・安心を確保しつつ新しい時代の学びを実現するため、学校施設の教育環境向上や、教材等の教育環境整備充実を図ることなど、事務職員の行動により効果的な整備ができる可能性についても期待されるところです。さらに国会や中教審等では「働き方改革」「部活動改革」「給食費無償化」などの問題が具体的に議論されているところです。

  栃事研ではこのような動向を踏まえ、元年度に策定した「第2期とちぎ学校事務ビジョン」と実行策「とちぎサクセスプラン」、中期研究計画の成果と課題を分析・検証して、子どもの学びの充実を図る事務職員の姿と実践の具体化を進めるべく活動してきました。5年度もビジョンと中期研究計画の2本の柱で全体活動を行い、子どもの学びづくりへの参画に必要となる事務職員の資質能力の向上に結びつけていくための事務職員の人材育成など、これまでの研究、研修活動における実績から今後の活動のさらなる充実を目指していくことを考え、引き続き研究主題を「子どもの学びの充実を図る学校事務」としました。

  変化の激しい時代でも、子どもたちが自ら学び、育ち、成長していく力を身に付けていくためには、学校の果たす役割、そして私たち事務職員の役割・機能、行政や地域との連携の在り方などの研究を更に進めていく必要があります。また、研究主題である「学びの充実を図る」は、各事務職員が各学校において、実践・行動することで達成すべきものであるという考えに基づいています。これは、事務職員が学校において教職員、保護者や地域と協働していくこと、学校関係諸機関・団体と連携していくことにより果たされていくことになります。共同学校事務室内においてもその質を高めるためにチームを意識した活動、組織やチームによる仕事の推進が不可欠です。具体的には、研究主題を確実に果たしていくため「カリキュラムマネジメントへの参画」「共同学校事務室の質の向上」と「事務職員の力量形成」を主体として継続して研究・研修活動の充実を図りたいと考えます。

「カリキュラムマネジメントへの参画」

 カリキュラムマネジメントをこれからの学校経営の姿として捉え、ここへの参画は事務職員が必ず達成しなくてはならない課題として捉えています。全国公立小中学校事務研究大会埼玉大会分科会で研究部が提案した、学校経営ビジョンの「実現」と「策定」への参画や、実践を通した事務職員の力量形成、共同学校事務室の質の向上の研究を進め、達成に向けた具体的活動に取り組みたいと思います。

「共同学校事務室の質の向上」

 共同学校事務室は教育の質の向上を図るための「組織」です。組織リーダーとともにメンバーのマネジメント力の発揮が問われます。若年層の意識の持ち方や行動力、それを支えるリーダーの存在が組織力を高めていきます。共同学校事務室を基盤として、業務改善を推進し、学校のマネジメント強化に尽力していく必要があると考えます。共同学校事務室自体は、市町の教育推進に寄与していくことになりますが、栃事研は、人材育成やカリキュラムマネジメントへの参画を果たすための重要な組織として捉えています。その進捗状況や、在り方、仕組み、効果などを把握し、提供することで全県的な広がりと内容の充実を図っていきたいと思います。

「事務職員の力量形成」

 事務職員の力量形成は、教育の質の向上やマネジメントの推進者、学校経営の担い手としての役割や機能を果たしていくための資質能力向上を図る試みになります。現在、「研修の体系化」により

力量形成を図っていますが、実態や現状に合った形・内容に変えていくことや地区・支部と栃事研の役割を明確化、県市町教委との連携の推進など図るため「研修の体系化」を見直し、研修の充実を図っていきます。研修は、身に付けた力量が学校現場に還元し、活かされて初めて「成果」になります。そこではまさに「実践力」が求められます。「仕組み」と「内容」で育てるとちぎの研修の一層の充実を図り、経営参画を果たす事務職員の育成を進めていきたいと思います。

 「第2期とちぎ学校事務ビジョン」は、改訂版「サクセスプラン」により、目標達成のための取組をスタートさせ実践・行動いただきたいと思います。「中期研究計画」は、年次別課題「業務改善」とし、子どもの学びの充実に必要な、学校現場における業務の適正化に向けて、様々なアイデアを企画提案していくことができる、責任ある職としての事務職員の役割について考えていきます。一方で、主事・主任層の増加、再雇用制度や定年延長制度の実施等、事務職員の構成も変化する中、将来を見据え、時代にあった栃事研の役割や組織を見直す必要があると考えます。そこで、検討委員会を立ち上げ、新たな栃事研の組織づくりに取り組んでいきます。

  5年度は様々な形で制限された活動からコロナ禍以前の活動へと戻る兆しが見えてきました。これまでの経験や反省を生かし、知恵を出し合い、各専門部を含め組織全体で工夫して活動していくことが大切です。活動にあたっては、目標を立て、達成に向けチーム力を発揮して進めていただきたいと思います。栃事研役員一同、総力をあげて真摯に取り組んでいきたいと思います。

 

2 行動指針

 この指針は、「子どもの学びの充実を図る学校事務」を研究主題とし、ミッション「子どもの豊かな育ちを支援する学校事務」の達成を目指した活動を基に、これまでの成果と課題を踏まえ、「これからのとちぎの学校事務の創造」に向けて、一人ひとりが事務職員としての職務、栃事研の役員としての職務を遂行する上で必要な方向性を示すものであり、行動の基本的考えとなるものです。これまでに積み重ねてきたことをしっかりと胸に刻み込み、新しい時代の学校事務を創造し行動いただきたいと思います。

(1)自覚

 栃事研組織の一員としての自覚を持ちそれぞれの役割を果たし、組織の発展に寄与していただきたいです。特に、事務長職にある方は、高い専門知識や幅広い教養と経験を活かし、次世代につながる基盤を築いていただきたいと思います。そして、若年・中堅層はそれを引き継ぎ、次のリーダーとしての自覚を持ち、積極的に仕事に取り組んでいただきたいと思います。それぞれがしっかりと役割を果たすとともに、チャレンジ精神をもち実践、行動できる人材になっていただきたいです。栃事研は研究団体として長年、研究研修を中心とした活動を行い、学校関係諸機関・団体等からの信頼を得ています。役員の皆様が協力し、会員のために働くこと。その誇りとプライドをもって行動することが重要であると考えます。

 (2)責任

 栃事研は、各支部や地区との連携を通して、会員の成長(知識・技能・経験)を促す役割をもっています。栃事研役員として活動するにあたり、組織を担うものとしての「責任」を果たしていくことを、しっかりと認識していただきたいです。

 栃事研は任意団体ですが、各関係諸機関や社会に対して責任をもって目的を達成していく団体です。栃事研で活動することで役員の皆様の成長を図り、栃事研は基より、地区・支部等で中心的な役割を担う人材になっていただきたいと思います。

 (3)信頼

 信頼は、組織にとっての基盤であり、仕事をしていく中で、最も重要なものです。信頼される学校づくりのためには、事務職員(仕事)としての専門的信頼と、協調性や豊かな人間性を築く人間的信頼を、関係する全ての方から築きあげなければなりません。明確なビジョンに基づき、確かな活動を進め、成果を上げていただきたいと思います。その信頼獲得が事務職員の教育における職の拡がりとともに、人として、学校事務職員としての「成長」につながっていくと考えます。